株式会社オジックテクノロジーズ
常務取締役 金森元気
1947年、戦後復興の真っ只中、モノづくりや機械加工が盛んだった熊本県熊本市。創業者である、緒方尚氏は、材料の硬度を高めたり、サビの防止など表面に機能を持たせる表面処理技術に時代の流れが来ると読み、水資源が豊富である熊本の立地を生かせる点から「農機具に関するめっき」を主事業として創業したと言われている。以降「表面処理を進化させること」に特化してきた同社は1989年、現社長である金森秀一氏が社長に就任。弟である金森大次郎専務と兄弟経営を行ってきた。地元熊本大学との産学連携などめっきを中心としたケミカル技術を通じて地元熊本に貢献すべく活動している同社。今回、同社の次期後継者である金森元気常務にお話を伺った。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
オジックテクノロジーズは「学び続ける集団」である
「学びが中心にある学校みたいな企業ですね」と話す金森常務。「学生時代にめっきを学んできた社員はほとんどいないんですよね。むしろ入社をしてから”めっき”を学んでくれています」と続ける。顧客から提供された材料の特長、用途、使用環境など様々な角度から物事を捉え、試行錯誤しながら、最適な処置を提案する。これら一連の流れが社員の中に学びを育むことになると語る。この学びの姿勢は、風土改革にもつながったと話す。仕事が減ったリーマンショック時に、社員が提案してくれたのは、「オジックファンを増やすためには、信頼・品位・品格が必要」という答えだった。以降、CI活動としてビジネスマナーなどの社内勉強会を実施し、近年では“改善を見える化し、イイね!がたくさんある会社を目指す全社員参加”のSeeekai(シーカイ)活動に進化したという。社内新聞、挨拶運動、地域の交通安全活動など社内活動も活発な同社。社員のスキルアップを支える仕組みが「学び続ける集団」を生んでいるのだと語った。
適応分野の広さとネットワークを生かした汎用性の高さ
半導体やロボット、医療機器など幅広い分野に適応できる技術・ノウハウと産学官金連携を可能にする広いネットワークが同社の独自性である。「弊社を見つめ直した時、めっき技術の充足という結果ではなく、そのプロセスが非常に重要な経営資源である事に気がついた」と話した金森常務。これまでに培われた「化学に関するノウハウ、スキル、設備、品質レベルなどが充実したこと」を自社の経営資源と認識したことで、今まで以上に適応できる分野拡大の可能性に気づいたのだ。つまり化学が必要とされる分野がオジックの事業領域である。外部との連携にも力を入れている。バイオ分野では地元ベンチャー企業と連携し、世界でも珍しいサクラン抽出事業を化粧品向けに開始。医療分野では地元大学と連携し、血中がん細胞を捕捉する医療機器の研究に着手し始めている。このように蓄積されたノウハウとネットワークを生かし、幅広く事業を成長させているのだ。
”進化的適合力”を持ち、事業展開の可能性をつくる
コロナ、DX、SDGs、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、働き手不足など経営に与えるインパクトが多い経営環境の中、”100年企業の実現が三代目社長になる私の使命”と考え、そのキーワードは”進化的適合力”であると語る。金森常務は、ダイナミック・ケイパビリティ論にあるように、外部環境の変化が著しい中から、自分たちの機会や脅威となるものを早期に発見し、それらに対し経営資源の見直し・再編をすることで会社自体を変容していく”進化的適合力”を高めるべきと考える。そして、単に外部環境へ対応するのではなく、企業本質を捉えながら外部環境へ適合し進化していくのが重要である。そのためには、情報キャッチのスピードと、定期的な社内の見直しが必要だと考える。同社において、確立されたコアコンピタンスを時代背景に合わせて組織を少しずつ変容させていく進化的適合力を考えていくことが重要であり取り組んでいきたいことと語った。



金森常務が考える未来のオジックテクノロジーズ
後継者を意識し始めたタイミングはいつですか
そうですね。しっかりと考え始めたのは、大学入学のタイミングですかね。大学進学を考えた際、父である金森社長へ相談したところ、めっきについて学べる研究室がある大学を紹介してもらったんです。それまで意識したことなかった同社の存在がこのタイミングでぐっと身近な存在になったことを覚えています。恩師のもとで修士課程まで行きましたが、この期間に後継者としての意識が強くなりました。同社入社前に工業薬品メーカーで3年ほど社会人経験を積むという選択をしたのもその影響だと思います。他社に身を置くことで、様々な方と出会い、同社を客観的に見ることが出来、良かったです。
金森常務が考える兄弟経営について教えてください
実は、現社長と専務も兄弟経営をしていまして、私たちで兄弟経営も二代目にあたるんですよね。理想としては、現社長と専務の関係性のように、我々兄弟もお互いに文系・理系の道を歩んできているので同じような目線を持てているのではないかと思いますね。もちろん、家族だから信頼できることってたくさんあると思うんですよ。お客様からも「オジックに」と頼まれることもあると思うんですけど、家族経営だからこそ広げられるネットワークがメリットだと思っています。私の代わりを取締役が行うこともできますし、その反対もできます。それぞれの得意分野から会社を支えることができるのはとても強いことだと思います。
100年企業を目指し、金森常務の想いを教えてください
更なる事業展開を模索するのはもちろんですが、当社の独自性は、SDGsやGXなど社会的課題に対応できるポテンシャルを持っていると思っています。熊本は世界でも珍しい地下水都市ですが、その水量は年々減少しております。熊本の水保全をするために「工場で使う水の再利用」、小型再エネ設備導入による「ZEB(Net Zero Energy Building)化」、働き手不足解消のためにもAIやDXによる省人/省力化した「スマート工場」などを行うことにくわえ、社員の技術力、スキルを高め「働き甲斐のある職場を提供する」ことが重要だと思います。「ZEB型スマート工場によるモノづくりで、豊かな熊本の実現」が未来のオジックの姿の一側面であると考え、社員と一緒に100年企業を目指して頑張っていきたい。
お互いに支え合う兄弟経営を強みに地域貢献へ
株式会社オジックテクノロジーズ
取締役 金森雄気
2015年に同社に入社した金森取締役。大学在学時には、将来経営を継ぐことを意識しており、同社への入社は全く抵抗がなかったと語る。「他にはない経験ができることが魅力に感じていた」という金森取締役は、大学で会計・経営について学び、大学卒業後は地元熊本にある税理士事務所に就職。その後、将来的に同社の営業面に携わることを見据え、東京に本社を置く商社にて2年間勉強をし同社へ入社。入社時から、総務・経理・労務・採用を担当しており、現在は、営業部と総務部の統括を行っている。今後、金森常務とともに兄弟経営を支えていく金森取締役に同社での「やりがい」や「夢」などを伺った。
伝統の継承と挑戦の未来を担う社員の思い
社長と専務のような兄弟経営のバランスに憧れて
「兄が理系であるなら、自分は文系でと考え会計・経営面に関することを大学では学びました」と語る金森取締役。大学在学時から、既に将来経営を継ぐこと、金森常務の支えとなれるようにとキャリアプランを考えていたのだ。「今の社長と専務の関係性ってとても理想的だと感じています。社長が全社に向けて旗を振り、専務がそれをサポートする。専務の社員やお客様への接し方や立ち振る舞いから学ばせていただくことが多いですね」と話す。大学卒業後、二社目で関東の商社で働きながら、同社での自身の未来をふまえめっきの専門学校に通い、めっきの基礎知識を習得したという金森取締役。「めっきをやっているのに、何も知らずに戻るのではなく基礎的な勉強はしておきたいと思って社長にお願いをしましたね」と話す。金森取締役は、「現社長と専務のように、兄弟だからこそお互いに支え合える存在となる兄弟経営の形をつくっていきたいですね」と笑顔で語った。
挑戦できる、安心できる職場環境づくりに力を入れていきたい
「会社が新しいことに挑戦していくこと、社員が働きやすく、挑戦できる環境を作ることがやりがいです。」と語る金森取締役。現在、注目を集めている半導体産業での仕事にも携わっており、この環境がありがたいと話すとともに、自社のビジョンである「地域経済活性化の根になる」が広がっていくことに未来を感じているという。「弊社のケミカル技術が産業の発展に貢献できることが誇りですし、弊社を通して熊本という地域を世界に知ってもらいたいですね。」同社独自の社員勉強会のみならず、「大学院へ進学できる制度」や「外部機関や通信で勉強を支援する制度」とあらゆる学びの場がある同社。一つひとつの仕事において、なぜそうなったのか原理・原則を各自が意識していることでこの環境を生かすことができているのだという。社員の成長が会社の成長に繋がる。今後も、社員が挑戦できる、安心できる職場環境づくりに力を入れていきたいと語った。
100年企業となる瞬間を社員の皆と喜びたい
「私が60歳を迎えるタイミングで、オジックテクノロジーズは100年企業を迎えるんです。それを社員の皆と喜びたいです。70周年の時は社員とそのご家族を招待してパーティをしました。その時以上のことを100周年の時はやりたいですね。そのためにも“オジックと仕事がしたい”と言って頂いているお客様へ貢献できるようこれからも社員と共に成長し100周年に向かっていきたい」と語った金森取締役。 改めて会社について伺うと、金森取締役も社風は「学び続ける集団」であると回答。金森取締役も金森常務同様に熊本の地域貢献を掲げる二人からは、既に将来の兄弟経営に向けてお互いに同社と同社に関わる人たちの幸せを願い、日々コミュニケーションを図っている様子が伝わってきた。今後、「学び続ける集団を軸とし、誰もがオジックと仕事がしたい、オジックで働きたいと思って頂ける会社でありたいです。」と金森取締役は語った。



金森取締役の描く未来図とは
人事担当から見て、どんな人と働きたいと思っていますか
そうですね、弊社では技術職と製造職があるのですが、どちらの職種においても「自己管理能力」、「考動力」、「変化対応力」のいずれかの特性を持っていたら嬉しいですね。別に最初から完璧にできる必要はありません。ただ、その素養をもっており、会社に入ってから伸ばしたいと思っている方と働きたいと思っています。弊社では、上司部下のコミュニケーションだけでなく、部門を超えたコミュニケーションが活発です。そして、若手をコアリーダーとして活動している理由の一つである、若くて柔軟な発想をぜひ社内に取り入れたいと思っています。だからこそ、単に行動をするのではなく、しっかりとその先を考えてアプローチしていく力の要素を少しでも持っている方とぜひ働きたいですね。
金森取締役にとっての兄弟経営を教えてください
就職について父からは特にどんな道を歩みなさいといった話はなかったですが、幼いころから父を見ていたため、同社を身近に感じ、気づいたら誘導されていたのかもしれません(笑)。金森常務と私は所属部署が異なるため、それぞれが得意分野でかつ、近すぎない距離で仕事ができているのが良かったと思います。技術的な視点で会社を見ることができる兄を尊敬していますし、頼りにしています。
現在のオジックは熊本のブライト企業やリーディング企業への認定や産学官金連携、社員が業務改善に対する意識が高いことなど優れている点が豊富にあります。父たちが作り上げてきたオジック・ケミカル技術を、兄と共に更に進化させ、サステイナブルな社会を牽引するような企業にしていきたいです。
数年後の世代交代に向けてどんなことに取り組んでいきたいですか
まずは、今までつくり上げてきた技術、人財を生かせるようにしていきたいと思いますね。現社長は創業者であるカリスマ社長から突然の引継ぎで、職人気質の方も多かった当時、苦労したことは多かったと思います。現社長がその思いを自身で経験し、理解しているからこそ今の幹部は、すごく柔軟な発想と経営意識を持った方が揃っている印象があります。今後は、私たち兄弟が経営を継いだ時に、幹部の方々にサポートいただくとともに次世代にどう展開していくのかが重要だと考えています。今後は、全社員が経営者目線で運営していけるような企業にしていくことが命題であると感じています。そして社員がオジックで働いていることを自慢できる会社にしたいです。
創業年(設立年)
1947年
事業内容
めっきを中心としたケミカル技術の開発・製造
電気めっき、無電解めっき、アルマイト、電解研磨
精密電鋳
新規多糖類サクランの抽出精製
所在地
熊本県熊本市西区上熊本2-9-9
資本金
2,300万円
従業員
134名
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