三鷹光器株式会社
代表取締役 中村勝重
科学分野における新しい取り組みの成功や発見の場面において、私たちはしばしば「誰がそれを成し遂げたのか」に意識を向け、時の人として注目する。しかし、偉大な成果の後ろには必ず「それを成し遂げるために用いられた何か」の存在があることを忘れてはならない。こうした日本の科学分野の発展に不可欠な存在の数々を生み出した企業、それが三鷹光器株式会社である。同社の事業は、天文機器から宇宙開発、産業機器、医療機器、太陽エネルギーまで多岐にわたる。今回は、様々な科学技術の進歩に技術的な側面から貢献するこれらの製品がどのような環境で、どのような人の手によって生み出されているのか、中村社長にお話を伺いながらその秘密に迫りたい。
伝統の継承と、未来への挑戦を可能にする革新企業の本質
脈々と受け継がれる精神「設計図は現場にあり」
100年使い続けてもガタが出ない製品。ミクロの世界でも寸分の狂いなく動作する製品。それを現実のものとするためには、いったい何をどうすれば良いのか。ものづくりとは、何を用い、どのように組み合わせて理想を形にするかという飽くなき探究の先にあるものだ。コンピューター技術の発展によって身の回りには便利な道具があふれているが、同社は職人の世界までもが道具に振り回されてしまう状況に警鐘を鳴らす。機械はあくまでもより良い結果を得るための道具であり、未熟なうちは赤ん坊のようなストイックさで先人たちから学び、経験という糧を積み重ねる必要があるということだ。教えられたことをその通りに繰り返すのではなく、自らの目で見て、学び、真似をして工夫を重ね技術力を身に付けてきた職人たちが集う同社だからこそ、職人の価値は「手」「足」「頭」によって発揮されるという言葉にも凄みがある。
常識や思い込みをアイデアで打ち砕く
ものづくりに携わる中小企業が生み出す製品の数々。なかでも、中村社長を筆頭に現代の職人同士がぶつかり合い、切磋琢磨することによって、三鷹光器は、日本のものづくりの未来を切り拓く。それは、製造現場における「困りごと」の解決を通じて数々のアイデアを形にし、信頼と実績を積み重ねた歴史的背景によるものだ。各分野で日夜学術研究を進める研究者が思い悩み、立ち止まらざるを得なかった課題の解決を担うのが、本来の職人の姿、すなわち、三鷹光器が説く技術者としての在り方は、業界や研究分野の枠にとらわれ絡まってしまった困りごとの解決者なのである。超新星の発見やLSI(高密度集積回路)生産における品質管理など、技術貢献の場は広く多様だが、こうした各方面での実績が評判を呼び、アイデアと工夫によって問題を紐解く三鷹光器のスタイルが信頼の積み重ねへとつながっていくのだ。
三鷹光器株式会社が説く「現代の職人」像
小さな会社が大きな会社に立ち向かい勝利するためには、知的財産の活用が欠かせない。すなわち、アイデアをそのままにせずきちんと武器にするということだ。今日までに積み重ねてきたイノベーションの連続を特許として保護し、世界規模で業界トップに君臨する海外企業へと挑んでいく。そして、中村社長は「三鷹光器が目指し向かう先は、ものづくりをやめること」とも語る。従来の職人、いわゆる我々のイメージする職人像は、モノをつくってなんぼの世界に生き、成立してきた。しかし、中村社長はそこに異を唱え、現場を知り最適な「解決」を導くアイデア・ノウハウの重要度を力強く説く。環境の変化に追随しながら高い価値を提供し続けるためには、特定の人やモノ、技術に依存するのではなく、ものごとを完成に至らせる過程を鮮明に描き切る「段取り」の部分にこそ意義があるということだ。



無から有を生む原点
-優秀な技術者を育てる秘訣とは
人間は真似をして成長する生き物ですよね。赤ん坊だって周囲の様子を見て物事を覚えていきます。両親に話しかけられた言葉を繰り返そうとしたり、目の前にあるものに手を伸ばして握ってみたり、試行錯誤を続けることで成長しているわけです。それはいくつになっても学び育つ場面においては普遍的なことで、ある程度まで理解できた者には、「教え込む」よりも「やってみせる」方が効果的だと思います。教えられたのではなく、やって見せられることをその目で見て、学び、真似をして実現する。「ああやってやるのか」「こうやってやるのか」ということを実体験を通じて覚える必要があります。人材は、こうやりなさいということをやってみせることで育っていくのだと思います。
―あふれるアイデアの源泉はどこにあるのでしょうか
アイデアはどこから生まれるのか。その答えは遊びの中にあります。幼い頃、私はよく木登りをしたものでした。単に木登りと言っても、そこには考えを巡らせるポイントがいくつも隠されているものです。大人は子供に対して「枝が折れるから危ないぞ」と言いますが、当時の私としては子供なりに考えて「折れない枝」と「折れない方法」を見極めて登っていたわけです。それは、知っているのではなく、体験してわかること。だからこそ、うちの装置が現場を救うためにはどうすればいいのかを考えるためには、現場を知る必要があります。苦労の場面を直に見て、いかに考え、知恵を出し、形にするか。問題解決のためにあるものづくりこそ、知的財産で勝負する三鷹光器の在り方です。
―どのような観点で人を見ているのでしょうか
人材の採用は、最初から信頼関係を築くことが大切だと思います。例えば、新たに人を雇う場面では、10年後、20年後のことまで想像しますよ。全国の大学の天文部に所属している学生さんや高等専門学校生が興味を持って志望してくれますね。ペーパーや実技の試験を経て、働いている現場を見学してもらった上で、なお三鷹光器への就職を希望されるのであれば、ぜひと。試験当日はお昼をはさみますので、季節のものを一緒に食べようとランチをしたりですね。それに、遠方からやっとの思いで来社される方もいらっしゃいますから、もし限られた時間が迫っているようであれば、「あなたを信用して言うけれど、持ち帰って親御さんや先生に立ち会ってもらってやり遂げなさい」と伝えることもありますよ。人とのご縁も信じるところから始まるのだと思います。
他の追随を許さない 「圧倒的なものづくり」
三鷹光器株式会社
第二製造部 技術開発課 中田雄介
日本が誇るものづくりの未来を担う若き職人たち。激化する技術開発競争の環境下にあってなお世界から注目され続ける三鷹光器株式会社。社員インタビューでは、脈々と受け継がれるその企業力を支える技術者の一人、中田係長にお話を伺った。中田係長が語る言葉を通じ、なぜ全国各地から志高い若き技術者が集うのか、特に、同社が今日までに歩んできた歴史を背負って立とうという気概が育まれるのか、その秘訣の一端が垣間見えたように感じられる。また、これからの未来について、日本のものづくりがどのようにあるべきか、同社がその理想像を発信し、先陣を切って体現していく過程にも引き続き注目したい。
伝統の承継と挑戦の未来を担う社員の思い
課題発見から解決までの全てに携わる魅力
旭川工業高等専門学校出身の中田係長は、全国の高等専門学校生が様々な課題を通じものづくりの成果を競い合う「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(通称:ロボコン)」への参加経験もある期待の若手技術者。ロボコン参加経験を通じて、課題に対して自ら解決策を考え、設計し、加工・組み立てを経て、更には操縦まで、「自らが全てを担うこと」に強い魅力を感じ、現職を志望するに至ったのだという。中田係長と三鷹光器株式会社との出会いは学生時代に遡る。とあるTV番組で取り上げられている同社の存在を知り、感銘を受けた。将来を見据え「なんでもできる会社」「全て任せてもらえる会社」がいいと考えていた自身の軸とぴったりと合致したのだという。「ここだ!って思いました」と語る中田係長の瞳は、日本が誇るものづくりの未来を担う熱い心意気に満ちている
「やってみたい!」にトライできる環境
中田係長は技術開発課に所属し、主要業務として新製品設計に携わる。とはいえ、自ら図面を描き、組み立てる場面や、営業担当として製品が使用される現場に赴くこともあるのだという。現場を知り、真に求められる課題解決のアイデアを生み出すことこそ三鷹光器の技術者、職人としてのあり方だからだ。中田係長の話によると、こうしたマルチな活躍を実現する背景には、社内コミュニケーションの充実度や自由度の高さも関係しているようだ。日常の会話や業務状況を通じて社長や部長が各技術者の適性や興味関心を把握しており、やってみたいことに進んで挑戦できる機会・環境が整えられている。自ら考え、伸び伸びと主体的に活躍できる職場には、「全てを担うことが出来る」という仕事の魅力にやりがいを感じイキイキと働く中田係長のような技術者たちが自然と集結するのも頷ける。
日本でつくり、世界で売れるものづくり
物があふれかえる世の中にあって、日本のものづくりはどうあるべきか、また、日本の技術者はどうあるべきか。田中係長の見据える未来には「日本でつくり、世界で売れるものづくり」が思い描かれる。これまでものづくり企業が苦しんできた価格競争や改良合戦の行く先に立ちはだかる「限界」を超える秘策は、他の追随を許さない「圧倒的なものづくり」にあるのだという。未来を語る田中係長からは、三鷹光器が歩み刻んできた歴史・伝統への自信、そして、同社ならではの発想力が更なる技術革新をリードするのだという気迫すら感じる。既成概念にとらわれず「コレが欲しいんだ!」と切望されるものを絶えず生み出し続けること。それこそ、伝統ある企業にあってなお革新的な挑戦をし続ける若き技術者が切り拓く「ものづくりの未来」なのだ。



プロフェッショナルが集まる職場
-今、注目の素材や技術はどんなものですか
僕たちが作っているものは一般的な機械に近いので、興味という意味では材料への関心は尽きません。最近で言えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)でしょうか。金属の代わりとして装置に用いるのであれば、軽量化につながりますからね。既に一部の工作機械では活用も進んでいますので、こうした先端技術は積極的に取り入れていけたらどうかなと考えています。ただ、技術開発も先を見据えて時流に合ったものを作る必要があるので、先に行きすぎず取り残されずの難しいところではあると思います。活用される現場の理解や環境をふまえ、適切なタイミングで発信することが重要ですね。三鷹光器がその分野を牽引できるように動くことが求められるのだと感じます。
―仕事を通じて「コレって大事だなぁ」と感じることは
仕事を通じて改めて感じたのは、人と人とのつながりがいかに大切かということです。思い返してみて頭に浮かぶのは、技術的な苦労がどうこうといったことよりも、ものづくりというものは多くの協力者なくして成り立たないものなのだということですね。例えば、とある機械装置を取り扱うといった場面にしても、必ずしも自分だけで完結できるとは限りません。関わる人というのは社内外様々ですが、自分の思い描くものごとを実現するためにも必要不可欠だと思いますし、そういった人たちとのコミュニケーションを大切にしていこうという考えは常に持つようにしています。それに、社員はそれぞれ所属部署や肩書がありますが、きっちり分断されているわけではなくマルチに働く傾向にありますから特に連携は大事だと思いますね。
―中田係長から見た社長はどんな人ですか
社長は失敗を咎めません。実は、ものづくりの場面では、なんだかんだ言ってもやはり実際に作ってみなければわからない部分がありまして。得てしてちまちました部分であったりするのですが、社長は「これをふまえて次の新しいことを試してみよう」と後押ししてくださいます。また、アイデアが湧き出てくる人ですね。例えば、自分で製品の特許を閃いたとき、知財担当の方に既出ではないか確認をしていただくと「既に社長が・・・」といった場面もしばしばあります。時折は厳しいことをおっしゃるのですが、常に社員への気遣いを心掛けていらっしゃるのではないかなと感じます。社長室を作らず社内を巡回されているので、気になったことはすぐに話しかけやすいというのも嬉しいですね。
創業年(設立年)
1966年
事業内容
■精密光学機器製造・販売 ・望遠鏡を始めとする天文機器 ・探査衛星に搭載する観測機器 ・非接触三次元測定装置等の産業機器 ・手術用顕微鏡を始めとする医療機器
所在地
東京都三鷹市野崎1-18-8
資本金
1,000万円
従業員
95名(役員8名・社員71名・アルバイト16名)
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